僕らは何者でもないのさ

多すぎ大人の選択肢

『カルテット』の「嘘」でも耐えられた吉岡里帆、まだまだ耐えられない相楽樹

昨晩に終わりを迎えた、秘密と嘘と謎と行間の四重奏ドラマ『カルテット』。 

このドラマで、いやこの1月-3月期の間で最も株を上げたのは間違いなく、 

吉岡里帆だ。 

 

では、この間にいちばん損をしたのは誰かというと、相楽樹である。 

 

カルテット1

カルテット1

 

 

吉岡里帆相楽樹、似た境遇のふたり。

 

学生時代からの演劇仕込みの実力をいかんなく発揮し、オーバーなまでの悪女役を怪演した、吉岡里帆。 

相楽さんだって、負けていません。ドラマデビューは、高校1年時。カルトドラマ『熱海の捜査官』の端役。謎の美少女が三吉彩花で、闇っぽい美少年が山崎賢人で、いじめっ子が二階堂ふみで、いじめられっ子が染谷将太のいま思えば凄すぎるに隠れる名も無き生徒が、樹ちゃん。 

どちらも、奇跡の美少女枠で芸能界に入ってきたわけじゃありませんよ。 

ふたりのきっかけは「朝ドラ女優」。 

吉岡里帆が『あさが来た』のメガネ少女「のぶちゃん」役で若干注目を集めれば、 

その次のクールで、相楽樹も『とと姉ちゃん』でレギュラーの次女・鞠子役を射止める。 

大手プロに所属しているわけじゃないから、互いに簡単なスターダムではない。 

女優だけども、嫌だけども、「週プレ」で水着にもなります。そうやってもがき続けた、ふたりの2016年。 

 

で、2017年、どうなったかといいますと。 

相楽樹は『カルテット』と同じクールにドラマ『嫌われる勇気』に出演。 

ぼくは、あのドラマ2週でやめました。 

理由は香里奈の一切笑わないキャラでも、加藤シゲアキの棒読みでもなく、相楽樹の「どうして、そんなキャラをやらせようと思ったの????」という配役のせい。 

そもそも、比較的に薄い顔の相楽樹にベタベタに塗ったかのようなベタな濃い役は似合いませんでした。 

残酷です。同じような道を歩んでいたはずなのに、出演するドラマひとつでハナ差、アタマ差が2馬身、3馬身。 

 

一方の、吉岡里帆ちゃんは、『あさが来た』が終わると、『あまちゃん』のオーディションで “落とされた” 宮藤官九郎のドラマ『ゆとりですがなにか』で、童貞・松坂桃李を誘惑する、ゆとり第2世代の教育実習生→焼き鳥屋バイト役で好演。これが悪女の始まり。 

でも、地道にバラエティに出ているから、普通のお姉ちゃんなんだといこともすぐに見えてくる。

www.instagram.com

そして、秋には『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』に出演。半分真裏の火曜22時はあの『逃げ恥』でした。そして、『逃げ恥』も終わりに近づくと流れ始めた告知。ピアノインストと4人の実力派の映像。あの時から、予感はありました。甘く危険な感じが。 

 


[新番組] 嘘つきはオトナの始まり 1/17 スタート 火曜ドラマ 『カルテット』【TBS】

 

 

劇中、 

吉岡里帆はまたも、クドカンに振り回される。 

一度めは『あまちゃん』の落選。 

二度めは『ゆとりですがなにか』で与えられた、いわば「狂わせガール」役。 

三度めは『カルテット』中盤、クドカン自身が主人公・真紀の夫として、アリスを別荘のロッジから振り落とすこと。 

このドラマの肝は、やっぱり「」だ。 

言葉にしなくても、見ている誰もがここは「嘘」の、「架空」の世界だとわかっている。 

30代4人で始まる大学生のような遅すぎた青春だって、みんな「嘘なんだ」と心の奥では諦めている。 こっからクドイですよ。

そう、だとわかっているから。アリスは、ふしぎの国のおとぎ話=「」を体現する女性。女優・吉岡里帆自身の本性とは「」のアリス(と信じたい…)。そして彼女が死ぬことも、本当は「」なんだ。と、みんな期待してしまう。 

これは完全にフィクションの勝利です。だとわかっているから自分たちの思いが通じる、と思った時点で見ているものは完全にその世界観に取り込まれている。 

そして、取り込まれた人には忘れらないドラマになった。 

 


ZOZOTOWN ツケ払い CM まとめ 吉岡里帆 ゾゾタウン

 

最後の最後の、 

「人生、

チョロかった~!」

f:id:SilentSchent:20170322111027j:plain

 

去年から今年にかけて、立て続けのドラマ出演に、CM出演も8企業(商品)。この3月にも新たに2本が始まった。いま、まさにその「人生チョロい」を体現している女優が放つ一言は、インパクト大。 

でも、やっぱり、それも「」ですよ。

みんながみんな、「人生ってチョロくない」ことをわかっているから。そう吉岡里帆の女優人生だってチョロくなかったことが、メタでわかっているから、あのセリフに、震える。 そんな本当と嘘のあいだで悶えるのが大人なんですね。

 

 

そしてもう一つ、

吉岡里帆は、「であることをわかっていても視聴者が耐えられる」、彼女自身はそういった「チョロくない」女優になっている。

 

ひとつ間違えれば自分だって損をしたかもしれない、というのは最終話のひとつ前で色仕掛けに失敗する前のアリスちゃんが暗示していた。 

 

今度は、相楽さんが「チョロくない」を体現する番ですよ。 

 

FRAGILE フラジャイル

FRAGILE フラジャイル

 

 音楽も素敵だったなあ