僕らは何者でもないのさ

多すぎ大人の選択肢

みだれ髪、どこかわざとらしくて

いつもは私から連絡していたのに、4日ぶりのLINEは彼が送ってきた。

朝、目が覚めると

「おはよ」

の何気ない一文。それに違和感があって、枕に再び顔を埋める。

 

体がどこか気怠くて、すぐにでも瞼が落ちてきそうな感じを繰り返すと、時計は9時をまわっていた。

ベッドの上に投げ出したスマートフォンがまた震えると、何も知らせていない彼から、猫が首を傾げているスタンプが送られていた。

隣の部屋の母もついさっき布団から這い出したようだ。長い髪を束ねたりまとめたりもせず、洗面台で日課の起きてすぐの歯磨きに勤しんでいる。

「隣、借りるよ」

そう言って、私は顔を洗い始めた。排水口を見るように顔を下へ向けると表情を悟られないような気がして、心が楽になる。

 

急死した父の葬儀から一夜明けた。

 

私と母はどこか何気ない今朝を演じている。そんな気がして、すごく嫌な感じがした。