僕らは何者でもないのさ

多すぎ大人の選択肢

たまには肩肘張ってアイドルソングを

僕のしょうもなくて、大したことのないアイドル遍歴を晒すと、始まりはSKE48からだった。

でも、いつからかユニゾンが聞けなくなった。というか、もともとユニゾンのない、もしくは少ない曲が好みだったのだ。それがSKEの選抜メンバーが増えるにあたって反比例でユニゾンは増えていく。


2010/11/17 on sale 4th.Single「1!2!3!4! ヨロシク!」Music Video

このころはW松井をはじめとして、上位メンバーと下位メンバーとでソロパートの差が。そのおかげで不平等だけど曲には個性があった。


だから、SKE48は聞かなくなった。

 

そして、僕の一推しになったのが「エビ中」こと私立恵比寿中学だった。だから、ここから一部は「僕の好きなエビ中をアゲる記事」になる。でも、どのアイドルを貶めるとかなくみんな好きだから勘弁して。


私立恵比寿中学 『仮契約のシンデレラ(ショートバージョン)』

元々のメンバー構成が8人(~9人)、サビ以外はソロパートの構成が定番なのだ


ニゾンはAKBに代表されるが女性アイドルだけでない、アイドルソングの定番といえる要素だ。嵐だってSMAPだって、そうだろう?それが無くなったらなにがアイドルソング “らしさ” として残るか?

僕が考えるひとつは、「声遊び」だ。
ニゾンの反対を究極に突き詰めた結果、アイドルの声は楽器のように作用する。


期間限定公開!伊藤万理華 17th個人PVフルバージョン『伊藤まりかっと。』

伊藤万理華の乃木坂恒例個人PV。「まりっか '17」といい、下手を大肯定できるほど個性が溢れすぎている、良い

 

中居くんのひどい個性的な歌声だって、これはひとつの遊びなのだ。エビ中でいえば、廣田あいかが強力な武器だがメンバー全員が「歌声」と「遊び声」を使い分ける。上の「仮契約~」を聞いていいただければわかるが、なんなら、わざと外してくる

では、もうひとつ。僕はこれがもっとも “らしい” ところだと思う。
それは、「ハイコンテキスト」なところだ。 High-Context。Highは「高い」、Contextは、

1(文章の)前後関係,文脈,脈絡,コンテキスト.
in a different context 異なった文脈の[で(は)].
2〔ある事柄の〕状況,環境 〔of〕.
in the context of politics 政治という面において(は).
http://ejje.weblio.jp/content/context

である。
つまりは、どういった文脈で遊ぶか?これがいまのアイドルソングの主題だと思う。
たとえば、昨年の大ヒット曲


欅坂46 『サイレントマジョリティー』

なによりも強烈なのは平手友梨奈の強烈な視線ここまで攻撃的で「入り込める」アイドルはいなかった。その攻撃性も、単に、某A氏の策略とだけ読んでしまったら面白味に欠ける

 

だって、欅坂46の、一見イマドキの「物申す」ことなど考えていないような女の子たちが、

君は君らしく 生きていく自由があるんだ
大人たちに支配されるな

(中略)

君は君らしく やりたいことをやるだけさ
One of themに成り下がるな

と歌うから。そこにおもしろさがひとつ加えられる。
もうすぐ解散する、清竜人25

グループのコンセプトの時点から、アイドルなのに「一夫多妻制」「女の娘を差し置いて男がセンター」という遊びをしている。


清 竜人25「Will♡You♡Marry♡Me?」Music Video

だが、アレンジにダンス☆マンというハロプロ的なアイドル文脈はけっして外さない。外したらそれは遊びじゃなくなるから


じゃあ、誰もがハメを外して、アイドルチキンレースをすればいいのか?「ギャップ」を競うだけじゃない。僕の好きなエビ中は、


私立恵比寿中学 『大人はわかってくれない』

エビ中が優れたのは世界観の想像性だった。でも、それが一定のファン以外を取り込まない土壌になっていたのも事実。それをいかに打破するかが現段階のエビ中の面白味になっている。

 

“中学生”“思春期”という誰もが知る文脈のなかで、どれだけ遊ぶか?それも提示してくれる。
それだけにとどまらない。それをライブパフォーマンスにおいても、その、文脈の「提示-解釈」をおこなおうとする。


◎ ㋚ドンデ㋜ 歌詞付き

岡崎体育らしいアイドル自体へのアイロニックさ。それはMVも同じ。(非公式動画はリンクが飛ぶから嫌なんですが)


このライブ版とCD版ではダンスサドンデスの脱落者が変わってくる。このとき、2016年最後のライブで同年に「突発性難聴」で一時活動休止をした柏木ひなたと「バセドウ病」で同じように活動をセーブした小林歌穂という、いわば“足を引っ張った”ふたりをダンスサドンデスの最後に残して、

私立恵比寿中学にビーナスは必要ないわ」
「そうよ、私たちは全員横一列」
「同じ歩幅で歩んできたじゃない」
「楽しかった事も嬉しかった事も、一緒に喜び合った」
「辛いときも苦しいときも、一緒に乗り切ってきた」
「最後のサビも、みんなで一緒に歌おう」
「うん、立ち上がれ私立恵比寿中学ー!」

という言葉を投げかけるのはずるいね。隣のおじさんボロボロ泣いていたよ。
そして、もうひとつエビ中が何よりすごいのは「アイドル文化」自体を“文脈”として遊ぶこと。


◎ 全力☆㋶ン㋤ー 歌詞付き

無意味に手を後ろに回すダンスを初めて見たとき、これは「やりやがったな」と思ったものです。乃木坂はそういった部分で印象を強くするようなダンスが多い

 

こう、いかにも乃木坂っぽく作ってくる。そして、それをモノホンの乃木坂作曲陣の杉山勝彦にやらせること。杉山の乃木坂曲といえば、これがある。


乃木坂46 『制服のマネキン』Short Ver.

ね、サビで手のひらを強調するでしょ


そして、「制服のマネキン」ぽいダンスまでつけてきたのが「全力☆ランナー」ですね。このパロディ精神は昔からだし、こういう聞いている側に「わかるでしょ?」と問いかけてくるのが、エビ中がやめられない」、中毒的な理由だ。

でも、最後のアイドル文化の自己反省的な文脈遊びでいま一番おもしろいのは、ハロプロじゃないかと思っています。


アンジュルム『臥薪嘗胆』(ANGERME [Extreme Hardships]) (Promotion edit)


モーニング娘。'16『泡沫サタデーナイト!』(Morning Musume。'16[Ephemeral Saturday Night]) (Promotion Edit)


こぶしファクトリー『チョット愚直に!猪突猛進』(Magnolia Factory [Foolishly Honest! Impulsive Actions!]) (Promotion Edit)

 

ハロプロといえば、つんく♂だが、2年ぐらい前から新たなフェーズになった。それはいわば、ちょうどその頃に出た宇多田ヒカルのソングカバーアルバム「宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-」といったところだ。

 

 

そう、星部ショウの、津野米咲の、ヒャダインの、そして聞く側の「不特定多数による不特定多数の“つんく♂”の解釈」が始まったのだ。
しかし、これからまた次の段階に入るはずだ。

「不特定多数からのつんく♂解釈」を経て、今度は「つんく♂による“つんく♂解釈”」が始まること。いや始まらなきゃ、つんく♂じゃない。だって、「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」を反語にやってきたのだから。そうやって新たな幕を上げなきゃいけない。
それを聞いて僕らは何を思うか。賞賛するか、罵倒するか。
アイドルソングなんて癒やしじゃない。本当は肩肘張って必死に、耳に穴が空くほど聞かなきゃいけないんだ。これはアイドルと僕達との闘いだ。


℃-ute『The Curtain Rises』(℃-ute[The Curtain Rises])(Promotion Edit)

 

To Tomorrow/ファイナルスコール/The Curtain Rises(初回生産限定盤SP)(DVD付)

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