松野莉奈さん、僕も何だか焦っちゃうよ
青い海に囲まれた、9番。
彼女は学級の象徴だった。
寄せては返す、戦国の波。己とマイクのみで生き抜いていく少女たち。
誰もが入学できる通信制高校、顔もよく知らねど私達はみんな同級生だよのマンモス校精神。でも、そんなの古臭いよね。そう言い放つクールビューティーがずらり、と。都内に構えたつ秘密の花園。しかし、もとをたとれば学校法人やすすグループ。
僕たちは疲弊していた。
学校のマドンナを選ぶことを、それに選ばれし少女が絶叫をあげるのも、敗れしものが涙し去ることも。そもそも、どうしようもない文化資本を見て見ぬふりしてきた。
そんな逃げ先。
5人の少女たち。はじめは、仕方なく入ったクラブ活動だったようで。
なんだよ、このセンセーやる気だけあるな~おい、って。少女たちはそんな気分だし、「部活」っていうより「同好会」のようだから、練習場所は音楽室と家庭科室のある階の踊り場みたいな、そんな電気屋ステージ。でも、通っているうちに彼女らもなんだか楽しい。こいつも仲良くしてやってよ!。センセー連れてくる、また1人、2人。みんなでとにかく叫んだ大声、そんなダイヤモンド。いや、ダイアモンドか。
あー、楽しい~って彼女ら気分は小学6年生みたいな。まだまだ、ミニチアみたいな。
でも、ガキんちょ1年経てば中学生。少女の1年は本当に短い。子役ブームだなんだって、あの、日本がうらやむ大女優の映画出演は14歳とかって嫌でも聞こえてくる。2年、3年経ったらなんとなく未来が見えてくる。
あれ、わたしはこんなでいいのかな。
16人いたのに、気づけば9人。
僕が初めて行った「文化祭」。是非とも来てください~タダなんでって、声かけてくれた女の子可愛いなって思ったから、行ってみたんだよ、そう、たまたま予定空いてたしね~。なんて、嘘。ずっと気になってたんだ、ちらっと見るたびに素敵だなって、あの制服どこのガッコだろなんて、電車の中で降りる駅気にしているような。そうか「恵比寿」か、なんて。
行ったら、そりゃもう大変。空耳アワーのロン毛おじさん、漫画家やら引き連れた変なバンドで場がシラーって。オープニング直後のM-1かよ。みんな、焦ったんだろうね、何かやらなきゃ!って。なんとか取り持つ少女たち。俺の後ろで飛び回るコリラックマ。酷くて最低な初体験。何だこの気持ち悪い感じって。
でも、後日、思い浮かんでくるのは、あの背が高い子と高揚感。眩しいほど白く透明な少女。
そこからすぐに、遠征試合があるんでって、さいたま新都心。
あれが引退試合だったんだね。負けたら、ウチらの夏終わりだからねっ!て気合い入れてるような青春グラフィティ。ああ、冬か年末か。結果は圧勝だったのに、エースとセカンドとセンター怪我したよ。次の試合無理だね、みたいな。ウチら部員9人しかいないし、センターラインが野球の要だよ、みたいな。
しょうがないよ、公式戦は当分お休みだ。センセーそう言って。そのあと、俺がなんとかするみたいな、顔して急いで職員室戻った。
修了式。久々にセンセーに呼び出されたと思ったら、来年からこいつら入ってくるんだ2人、紹介された。特待生だよって。でも、8人じゃ野球できないじゃんって言い返すよ、年長少女たち。何言ってんだ!こいつら陸上部のつもりで連れてきたんだ、こっちがハードルで、こっちが100メートル。だから、お前は長距離、お前はやり投げ、これからはお前らも一人一人で種目を頑張ってみんなでインターハイ目指すんだよって。ああ、でも中学か。
そう、あの時、ほんとに「中学」になった気がした。
青ジャージの元ライト、元背番号9。お前は走高跳やってみたらどうだ。背が高いし、ポテンシャルあるじゃん。センセーがそう言ったか、言わないかはわからないけど、都大会で入賞するぐらいの活躍はあったよね。見ていて嬉しかったなあ。陸上競技マガジンの後ろのほうに自分の名前が載っているような気持ちでめくるページ、ハイファッションなんて、甘くてカワイイなんてよくわからんけど。
「部活」は「お友達クラブ」じゃねーんだよ!ゆとってんじゃねーよ!
そんな声がマンモス校から聞こえてきそうな。そんな感じの8人群像劇。
あなたは、けっして上手くなかった。野球で言っても、実力は「ライパチ」みたいなもんだ。歌うも、踊るも、振る舞うも。だけど、あなたの楽しそうな気持ちは伝わってきたよ。すごろく企画、初っ端なから焼肉弁当。夢を発表すればみんなで行きたいハワイロケ。限界予算のBS電波そっちのけ。おいしいもの食べては大笑い。
それでいいんだよ。それがいいんだよ。
闘うのに疲れた僕達、ゆとり世代の真骨頂。少女たち、ほんとはゆとり世代じゃないのに。何万人と心動かしているのに。あなたの姿にみんな勝手に写し鏡だ。闘わないという選択肢はあっても、生きていかないという選択肢はない。逃げるは恥だが役に立つ。進め、たまに戦いながら一歩ずつ。
学校というのは何て複雑なんだろう、学力、人気、知らぬ知らぬのマウントの取り合い。でも、そんなもの無かった。歌もダンスも人気もルックスも、誰が上だろうが関係ない。みんながマイクを持ってみんなが主役で。「私たちは全員横一列、同じ歩幅で歩んできたじゃない」
世界のどこにもない「正しい学級」、そこの象徴ですあなたは。
とにかく全力で走っていたら、それでいい。それが美しい。
部屋に転がる、買っただけの『POPEYE』。コンビニで、トラウマになったスポーツ新聞から逸らすように目を移して、入ってきたキャッチが一本。「二十歳のとき、何をしていたか?」
あなたは、なにをしていたんだろうか?なにができたんだろうか?
出版家業は鉛筆1本で無限に続く
なんだかんだ、見ていましたよ。最近はお仕事ドラマの中でも出版業界がすごく多いですよね。
自分でも意外なのが、いまの仕事を始めてからいちばん身近なものってなんだろうなって思うと、「鉛筆」なんです。
もちろん、資料やら原稿やらはPCで作ります。でも、自分の仕事の欠かせないものといったら鉛筆。小学校のときはあんなに「ダサい。はやくシャーペン欲しい!」と思っていたのに今では少しでも大事に使いたいという感情が芽生えてきました。
なぜ、そこまで鉛筆が大活躍なのかというと、2つのことが仕事において多いからだと思うんですね。
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